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高齢化社会の進行、その対策、法整備

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第1回目は、私自身も大いに関係がある「高齢化社会の進行、その対策、法整備」について説明させて頂きます。

平成29年4月に制定され、同年5月に施行された成年後見制度の利用の促進に関する法律(以下、簡単に「利用促進法」といいます。)とそれに先立つ政府の平成29年3月24日閣議決定「成年後見制度利用促進基本計画について」(以下、簡単に「基本計画」といいます。)について説明をしたいと思います。

法律は、概ね第1条に、その法律が目指すものすなわち「目的」を掲げています。利用促進法の目的は、認知症などに罹り日常生活や自分の財産の管理などに支障が生じている高齢者、障がい者の方たちを社会全体で支え合うことが必要であるという認識に立って、その重要な手段である成年後見制度の利用がもっと利用できるような社会の仕組みをつくってゆこう、そのために、基本理念を定めるとともに、利用促進のための会議や委員会を(国の機関として)設置するなど、いろいろな施策を(政府主導で)行ってゆこうという内容となっています。

利用促進法に基づく内閣の基本計画は、成年後見制度を利用しやすくする仕組み、運用、支援、不正防止などに向けた諸制度を整備してゆこう、これらを各地域においても整備し、各都道府県、市町村の関係各部署、さらには、弁護士、司法書士などの法律専門職集団、社会福祉関係団体などを含めた地域連携ネットワークを作り、いろいろな職種や団体が連携しながら取り組んでゆこうというものです。

以上の内容は、少し抽象的でわかりにくい面がありますが、日本においてさらに進むであろう高齢化社会、そして障がい者を含め判断能力に支障がある方たちにとってより住みやすい社会でなければなりませんから、理念としてはまさにそのとおりだということになります。

利用促進法や基本計画の具体的な内容については、簡単にインターネットなどでアクセスできますので、ぜひお読みになってください。

成年後見制度の具体的な説明は、当ホームページの該当箇所にかなり詳しく書かれていますので、それをお読み頂くこととして、この制度のニーズや利用方法は人それぞれであるとはいえるのではないかと思います。人によっては、保佐か成年後見を開始できる段階にまで判断能力の衰えが進んでいても、他人の世話になりたくない、財産を管理されたくないと頑なに拒む場合があります。重病の方に必ず医学的な治療を施さなければならないかの問題と似たところがあり、ある程度の段階にきたら福祉の思想を優先させるべきだという考え方、その反対に、できる限り本人の意思を尊重すべきだとする考え方、それぞれに程度の差もあり、ひとつの結論を出すのが困難なケースが世の中にはたくさんあります。

この点、誤解が生じないようにコメントしておきますと、利用促進法や基本計画は、高齢化社会に向けて何が何でも成年後見制度の利用を進めようということではなく、必要な人にその人の状況に応じた利用ができる仕組みを考えてゆこう、そのためにいろいろな団体や職種の人たちが連携して関わり合うべきだということなのです。

ただ、今後、各地で、どのような制度や仕組みがどこまで構築できるのかは大きな課題だと思います。

成年後見制度利用の需要がより高まれば、成年後見人などになる人材をさらに確保しなければなりません。従来、本人の近親者(配偶者、子、親など)がそのまま成年後見人などに選任されるケースが多かったのですが、身内の成年後見人などの中には、財産管理の仕方がルーズで問題があったり、時として自分のために本人の財産(預貯金)を引き出して遣い込んでしまうことが少なくありませんでした。もちろん、大多数の方は真面目にきちんと管理をしています。財産管理上の不正、不祥事は、身内の成年後見人らだけではなく、数は少ないのですが、弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門職にも起きています。

不正、不祥事防止は大変むつかしい課題ですが、完全な対策はないようです。一つの対策として、大手信託銀行が始めた成年後見支援信託、さらに、最近静岡県の信用金庫で始まった成年後見支援預金があります。成年後見支援信託とは、一定額以上の預貯金がある被後見人(保佐、補助の場合はできません)の預貯金の大半を解約し、払い戻された現金について、大手信託会社との間で信託契約を結んで信託し、家庭裁判所の指示書がなければ信託金を引き出せなくなるというものです。成年後見支援預金も似た制度ですが、支援信託のように契約書類をあえて作成せず、金融機関でふつうにやっている預金口座の開設手続きだけで支援預金口座が開設できます。家庭裁判所の指示書がなければ預金を引き出せない点は後見支援信託と同様ですが、始めた信用金庫によれば、利率が定期預金よりも若干高いそうです。

成年後見人などの人材確保のひとつとして、市民後見人の制度が検討され、各地でその準備や研修などが行われています。いわば資格を持たず専門職ではない一般市民の有志の方が研修を受け、一定の知識と技術を習得した後、成年後見人などの候補者として公に登録された後、家庭裁判所から成年後見人などに選任されることになります。具体的にどのような研修を行い、どの程度まで知識、技術を習得してもらうのか、専門職の人たちはそれぞれの法律によって本人の秘密を守る義務が定められ、この義務に違反すると刑罰などの制裁が科せられますが、市民後見人の方々の守秘義務はどうなるのかの問題などがあり、課題はまだ残されています。

以上