クレーム対応

1.クレームに対するスタンス

「クレーム」には、どうしてもマイナスのイメージを抱きがちです。しかし、顧客からの正当なクレームは誠実に受け止め、これまでのサービス体勢を真摯に振り返って反省し、企業のレベルアップへの新たなチャンスとしてとらえることが大切だと考えます。

決して企業防衛のみに走らず、顧客からのクレーム内容に耳を傾けて、真摯な対応をしていくことで、企業の信頼度を高め、その顧客を自社のファン客に変えてしまうということも多くあるのです。

2.正当なクレームと悪質なクレーム

もっとも、他方で、不安な世相を反映してか、悪質なクレームが増加の一途にあることも現実ではあります。理不尽なクレーム内容、粗暴な態度で企業やその売り場などに現れ、時として営業妨害的な違法行為に出ることすらあります。悪質なクレームなのか真摯なクレームなのかの判断は極めて重要です。

企業そのものや対応従業員が誠実さ謙虚さを失うと、真摯なクレームを悪質だと主張し、企業全体の信用失墜につながる可能性もあります。

逆に、企業が悪質なクレームの実態を把握できないでいると(現場任せにしていると)、悪質なクレーマーと対峙させられる担当従業員の精神、肉体を疲弊させてむしばむことになり、深刻な労働問題に発展することも考えられます。

このように、クレームは良質であっても悪質であっても、企業の業績と密接に結びつき、早急かつ適切な処置を怠ると、社会的信用失墜そして業績低下につながり、企業の運命を決する事態にまで発展しかねないものです。

3.悪質なクレームへの対処

悪質なクレームの場合、安易に要求に応じたり、感情的な対応をするのは逆効果になりかねません。ケースによっては、企業側にも非があり、弱みを握られているということもあるかもしれません。

しかし、被害を拡大させないためには、適切な交渉による早期解決や民事・刑事の手段が最も大事だと思われます。

そのためには、思い切って弁護士に相談し、早急に対策を講じることもご検討いただければと思います。

4.事前の予防策の重要性

クレームを事前に予防するような対策も重要です。

例えば、製品管理に適切な人材を置くことや、顧客窓口に適切な人材を置くことについて、十分な配慮をした人事管理が行われていれば、防げたクレームもあったかもしれません。

また、自社商品について、顧客に対し、適切かつ十分な説明をしていくことを社内で徹底することも重要な予防策です。例えば、販売実績を伸ばそうとするために、メリットばかりを誇張して話し、デメリットを隠してしまったり、そのような従業員の行為を放置してしまったとします。この場合、顧客から、消費者契約法などの消費者法規違反や民事上の不法行為にあたると主張され、損害賠償請求等の裁判の被告となってしまう可能性があります。それとあわせて、所轄の役所からも厳しい行政処分(業務停止処分など)が下るかもしれません。こうなるとその企業の存続自体が危うくなってしまいます。なお、商品や販売方法によっては、口頭だけの説明では足りず、法律が定める要件を備えた書面を交付して行わなければならない場合があることも注意すべきでしょう。